Lichtung Criticism

ナンバユウキ|美学と批評|Twitter: @deinotaton|美学:lichtung.hatenablog.com

AESTHETICS

草野原々『大絶滅恐竜タイムウォーズ』と絶滅の意志

はじめに あなたは、最後のページに辿り着き、呆然としているだろうか。それとも、書店やネット上で表紙を見かけて、この本、草野原々による『大絶滅恐竜タイムウォーズ』を買うべきかどうかをまだ迷っているのだろうか。いずれのあなたもさいわいだ。前者の…

表現と行為:表現行為論、芸術と政治、芸術倫理学

はじめに 表現を用いて行為を行うとはどういうことか。本稿では、J・L・オースティンの『言語と行為』における言語行為論を拡張した「表現行為論」のスケッチを行う。表現行為論は、「発表行為」「発表内行為」「発表媒介行為」の三つの概念を軸に、芸術作品…

聖地巡礼の美学

はじめに アニメーション作品の聖地巡礼とは何か。聖地巡礼はいかにして行われているのか。聖地巡礼はひとつの行為なのか、それとも、様々な聖地巡礼の行為がありうるのだろうか。 聖地巡礼を巡る問いは、様々な対象とトピックに関する問いを含んでいる。本…

作画崩壊の美学

はじめに DIESKEによる「作画崩壊の形式的な分析に向けたノート」は、「「作画崩壊」概念の実相を描きだすこと」を目指し、前半では、作画崩壊をめぐる言説を整理し、この概念がある作画を作画崩壊かあるいはそうでないかを分類するための「分類概念」として…

質感旅行スケッチ

はじめに 「質感旅行」という言葉は急に目立って現れた。本稿はその概念を公式の質感旅行的鑑賞と非公式の質感旅行的鑑賞に区別し、聖地巡礼という行為との関係を整理する。 はじめに 経緯 公式/非公式の質感旅行 覚書 経緯 聖地巡礼と質感旅行についての言…

『ガールズ ラジオ デイズ』––––周波数を合わせて

はじめに 小説、ラジオ、アプリ––––複数のメディアで作品世界を作り上げる作品、「ガールズラジオデイズ」。 ガルラジ*1については短期間にいくつものブログ記事が書かれている(萌黄 2019; Nobu 2019; シノハラ 2019a, 2019b; 鶏七味 2019; yunaster 2019)…

【11/25 文学フリマ東京ク07・08】サークル紐育春秋『硝煙画報』第1号に『鳩羽つぐ』批評を寄稿しました

サークル紐育春秋さんにお誘いいただき、11/25、文学フリーマーケット東京[ク07・08]にて頒布予定のインディペンデントカルチャーマガジン『硝煙画報』第一号に批評を寄稿いたしました。 新条アカネと宝多六花がめじるし。かっこかわいい。 『硝煙画報』に…

Virtual YouTuber’s Three Bodies——Person, Persona, and Character

Introduction What is the Virtual YouTuber (hereafter VTuber)? Who are they? Is there any uniqueness as a culture? Does it need any academic account or not? Why are (mainly japanese) people attracted by them? In this essay, I will make conc…

『高い城のアムフォ』の虚構のリアリズム:虚実皮膜のオントロジィ

Abstract 『高い城のアムフォ』は、投稿動画と異世界語という形式を、物語世界を構成し、鑑賞者をその世界に組み込む要素として利用することで「リアルな虚構」をつくりだし、同時に、VTuberカテゴリのもとで人形劇を鑑賞させることによって、VTuberの身体の…

バーチャルYouTuberスタディーズ入門:コミュニケーション・ボディ・エコロジィ

はじめに 『ユリイカ』七月号 特集 バーチャルYouTuber 発売されました。 ユリイカ 2018年7月号 特集=バーチャルYouTuber作者: キズナアイ,届木ウカ,月ノ美兎,赤月ゆに,万楽えね,みゅみゅ,皇牙サキ,広田稔,じーえふ,海猫沢めろん,ばるぼら,さやわか,黒瀬陽平…

バーチャルユーチューバの三つの身体:パーソン・ペルソナ・キャラクタ

はじめに 2017年の終わりごろ、にわかに人々の耳目を驚かし、少しづつ人口に膾炙しはじめたバーチャルユーチューバ(VTuber)というものたちがいる。動画では、3Dあるいは2Dモデルのキャラクタが動き、企画やトークを行なっている。それらは、あらかじめ決め…