Lichtung Criticism

ナンバユウキ|美学と批評|Twitter: @deinotaton|美学:lichtung.hatenablog.com

2019-01-01から1年間の記事一覧

表現と行為:表現行為論、芸術と政治、芸術倫理学

はじめに 表現を用いて行為を行うとはどういうことか。本稿では、J・L・オースティンの『言語と行為』における言語行為論を拡張した「表現行為論」のスケッチを行う。表現行為論は、「発表行為」「発表内行為」「発表媒介行為」の三つの概念を軸に、芸術作品…

草野原々「幽世知能」:理解不能、切断、痛み

はじめに 草野原々のこの物語は、ひとびとの心を動かさない。そこには理解しかない。 それは小説としての失敗か。言いたいなら、言わせておけばいい。 それは小説としての成功か。わたしにはまだわからない。 物語的フィクションは、キャラクタとの情動的な…

聖地巡礼の美学

はじめに アニメーション作品の聖地巡礼とは何か。聖地巡礼はいかにして行われているのか。聖地巡礼はひとつの行為なのか、それとも、様々な聖地巡礼の行為がありうるのだろうか。 聖地巡礼を巡る問いは、様々な対象とトピックに関する問いを含んでいる。本…

作画崩壊の美学

はじめに DIESKEによる「作画崩壊の形式的な分析に向けたノート」は、「「作画崩壊」概念の実相を描きだすこと」を目指し、前半では、作画崩壊をめぐる言説を整理し、この概念がある作画を作画崩壊かあるいはそうでないかを分類するための「分類概念」として…

浦上・ケビン・ファミリー『芸術と治療』注意と分散

はじめに 浦上・ケビン・ファミリーは、作曲、編曲、演奏、エフェクト、歌唱まですべてをこなすソロユニットである。浦上の編曲はこれまでYouTube上にアップロードされており、その高度やリハーモナイズの才と音色の豊かさから一部のあいだで高い評価を得て…

質感旅行スケッチ

はじめに 「質感旅行」という言葉は急に目立って現れた。本稿はその概念を公式の質感旅行的鑑賞と非公式の質感旅行的鑑賞に区別し、聖地巡礼という行為との関係を整理する。 はじめに 経緯 公式/非公式の質感旅行 覚書 経緯 聖地巡礼と質感旅行についての言…

『ガールズ ラジオ デイズ』––––周波数を合わせて

はじめに 小説、ラジオ、アプリ––––複数のメディアで作品世界を作り上げる作品、「ガールズラジオデイズ」。 ガルラジ*1については短期間にいくつものブログ記事が書かれている(萌黄 2019; Nobu 2019; シノハラ 2019a, 2019b; 鶏七味 2019; yunaster 2019)…